結婚式や披露宴で着るウェディングドレスを選ぶ時、是非とも知っておいて欲しいのが「ドレスの種類」について。
ドレスの名称や特徴を理解することで、自分に似合うデザインも分かりやすくなります。
今回は「ドレスの形(シルエット)」「首周り(ネックライン)」「袖・袖部分の形(スリーブ)」「スカートのデザイン」の名称と特徴を紹介します。
シルエット(ドレスの形)
- プリンセスライン
- Aライン
- ローブデコルテ
- ソフトスレンダーライン
- スレンダーライン・ペンシルライン
- エンパイアライン・アンピールライン
- マーメイドライン
- ベルライン
- オーバルライン
- 2Way・3Wayドレス
プリンセスライン
胸からウエストまではフィットして、スカート部分がギャザーやフレアーでふんわりと広がったデザインです。
スカートのふくらみはパニエで作る為、ボリューム感があり、愛らしい印象のものが多いです。
レースを多用した豪華なデザインは、華やかな装いになり、広くて大きな会場に向いています。
上半身はすっきり、下半身はふんわりするので、相対的にウエストラインを細く見せて体型カバーにも役立ちます。
Aラインは「ドレスの形」、プリンセスラインは「縫い方※」を意味するので「Aラインでプリンセスラインのドレス」もあります。
※ウエストでの切り替えがなく、身頃からスカートにかけてダースを入れて縫う。ウエストで切り替えたものは「ベルライン」と言う。
Aライン
スカートのウェスト部分に切り替えがなく、ドレス全体がアルファベットの「A」のように広がっているシルエット。
清楚で上品なスタイル。どんな体型もすっきり見せてくれて、誰にでも着こなしやすいのもメリットです。
デザイン次第で可憐にもシックにもなります。
ウエストラインが高い位置にあり、すっと伸びるラインが「縦」を強調してくれるので、背を高く見せる効果も期待できます。
1955年、クリスチャン・ディオールが発表したシルエットライン。
ローブデコルテ
女性の正礼装のイブニングドレスのこと。
薄い色の生地が多く全体的にシンプルなデザインになっており、胸や背中の襟ぐり部分が大きく開き、袖が無く、裾丈が長いです。
フォーマルなイブニングドレスの中でも、より正式なもので、晩餐会や舞踏会、皇室行事など公式夜会に着用されます。
ソフトスレンダーライン
名前通り、スレンダーラインよりも、ゆとりをもたせたラインです。
スレンダーほど体の線を強調せず、スカート部分に広がりがあり(Aラインほどスタートが広がりませんが)、更に動きやすくなっています。
シンプルでフェミニンな印象。
体型を適度にカバーでき、背が低く、ぽっちゃりした体型でも似合うので、スレンダーラインよりも人気があるシルエットです。
スレンダーライン・ペンシルライン
全体的に細身のシルエット。
マーメイドよりもボディラインを強調せず、程良いゆとりを持たせたデザインです。
着用すると、モダンな大人っぽい雰囲気を与えます。会場の広さを問わず着られます。
「背の高い人向き」と思われがちですが、デザイン次第では小柄な人でも長身に見せてくれます。
デザインがシンプルな分、素材やディティールにはこだわりたいドレスです。
エンパイアライン・アンピールライン
古代ギリシャの服装をモチーフにした、ハイウェストで直線的なライン。
クラシカルな雰囲気。女性らしい、上品な印象。
※アンピールはフランス語で「帝国」を意味して、英語の「エンパイア」と同じ意味です。
胸のすぐ下(アンダーバスト)で切り替えるデザインで、スカートはボリュームの少ない、ストンと流れ落ちるようなシルエットが特徴的。
ボディラインを気にせずに着られるので、どのような体型の人にも似合います。
特に小柄な人は可憐で可愛らしいイメージになります。
また胸から下のシルエットが隠しやすく、体を締め付ないので、マタニティドレスとして妊娠中も着やすいです。
【豆知識】
ナポレオン第一帝政時代に流行したクラシックスタイルが原型になっています。
それ以前の貴族服は、コルセットやパニエでメリハリのある女性美を強調した服装がスタンダードでしたが、フランス革命以降、貴族社会への反動として女性の自然な体のラインを表現するスタイルへと変わっていきました。
マーメイドライン
上半身からヒザ付近までは体に沿い、膝下から裾にかけて広がっている、人魚の尾のように広がったシルエットが特徴。
裾だけにギャザーやフレアを入れて、ボリュームを出します。優美な雰囲気でフェミニンなデザインなので人気があります。
バストやウエスト、ヒップを強調する「ボディコンシャス」なデザインで、長身で細身、体にメリハリのある人に向いています。
「マーメイドラインのウェディングドレスを着る為にダイエットをする」という人も。
ベルライン
スカートのシルエットがベル(釣り鐘)のように見えるドレス。
ウェスト部分を細く絞り、腰回りを膨らませたデザインの為、短めの丈だとキュートな雰囲気になります。
ウェストに切り替えがないものは「プリンセスライン」と言います。
ベルラインはスカート部分にギャザーを寄せて、腰回りを膨らませて、裾まで真っ直ぐに落ちるタイプのシルエットなので、裾のボリュームはプリンセスラインの方が多いです。
華やかで可愛らしいイメージで、広い会場に向いているシルエットです。
小柄な人はハイウエスト(ウエストライン「高め」)、長身な人はローウエストワンピース(ウエストライン「低め」)を選ぶと似合いやすいです。
オーバルライン
卵のように楕円形に丸くふくらんだシルエットのこと。
かなり個性的なシルエットですが、曲線を多用するので、優しく穏やかな印象を与えます。
「エッグシェルライン」「バルーンライン」「エッグライン」「ブッファンシルエット」「ボールライン」とも呼ばれます。
※1951年にクリスチャン・ディオールが発表したシルエットラインです。
2Way・3Wayドレス
1着で2通りや3通りの着こなしができるドレスのこと。
スカートや袖が取り外しできたり、ケープやボレロが付いたりします。
ネックライン(首周りの形)
- ラウンドネック
- スクエアネック
- ハイネック・スタンドカラー
- ハートカットネック・ハートシェイプ
- ボートネック
- ホルターネック
- オフショルダー
- キャミソール
- ビスチェ・ベアトップ
- ワンショルダー
- ロールカラー
ラウンドネック
シンプルな丸首ライン。
基本型は「首の付け根のラインに沿った形」ですが、浅めや深めのデザインも含まれます。
ベーシックなネックラインで、どのような体型でも似合いやすく、清楚で可憐な印象を与えます。
襟元の開きが浅めだと「小顔」、深めだと「首を長く見せる」という効果もあります。
スクエアネック
胸元を四角く切り取ったようなデザイン。
襟元の開きが大きい、小さいに関係なく、四角であれば「スクエアネック」と言います。
首筋が出るのですっきりとした印象になり、デコルテ(肩から胸元までの部分)を美しく見せます。
丸顔をシャープに見せて、広い開きが首をすっきり長く見せるので「顔が大きい」「丸顔」「首が太い」という人にもおすすめです。
ハイネック・スタンドカラー
顔周りを華やかにゴージャスに見せます。
ハートカットネック・ハートシェイプ
胸元がハート型にカットされたデザインのこと。
胸中心がV字になり、肩に向かって緩やかなカーブを描き、胸元の肌がハート型に見えることから「ハートカットネック」と呼ばれます。
デコルテに可愛らしさが出て、バストのボリュームを強調します。
女性らしいドレッシーさが演出できるので、人気のネックラインの一つです。
首を長く見せる効果があり「首が太め、短め」という人におすすめ。
ボートネック
鎖骨に沿って緩やかなカーブを描き、両肩に向かって横に広く開いたデサインです。
襟の形が舟底に見えることから「ボートネック」と呼ばれます。
首周りの露出が比較的少なく、鎖骨と首元をすっきり見せてくれます。
ホルターネック
前身頃から繋がるヒモ(ストラップ、バンド)を首に回したデザイン。
袖が無く、肩、腕、背中が大胆に出るのが特徴的です。
健康的なイメージで、美しいバックスタイルを見せたい人向け。
【豆知識】
ホルター(Halter)は、牛や馬の口に付けて引く端綱(はずな)のこと。
首から胸元を吊るしたように見えるので「ホルターネック」と呼ばれます。
オフショルダー
両肩を出したデザインです。ドレスの中でも、イブニングドレスに多く見られます。
オフショルダーは「肩から離れた」という意味です。
袖があり、ネックラインが大きく開くことで、肩幅を広く見せられるので、肩周りが華奢に見えて、小顔の印象を与えます。
「肩幅が広くてガッチリしている」「顔が面長」な人におすすめ。
襟を付けると目線が上に向かうので、背を高く、スタイルを良く見せられます。
キャミソール
細めのストラップで、女性らしさを強調するデザインです。
エレガントな雰囲気を高めます。
ビスチェ・ベアトップ
肩紐がなく、両肩を全て露出して、首から胸元が広く大きく空いたデザインです。
ワイヤーでバストラインを整えて、体にフィットするデザインになっています。
上半身のラインを強調して、肩やデコルテ、バストラインをすっきり美しく見せます。
襟が無い分、首元が寂しくなるので、ネックレスなどのアクセサリーをつけると良いです。
ワンショルダー
肩部分が片方しかなく、もう一方が露出したデザインのこと。
肩だけではなく、デコルテやスカート部分など全体的にアシンメトリー(非対称)なシルエットになっているドレスが多いです。
イブニングドレスに良く見られるデザインで、肩部分にはコサージュなどのワンポイントを付ければ、よりインパクトが増して華やかな印象になります。
個性的なだけではなく、大人っぽくセクシーな雰囲気を与えます。
ロールカラー
襟が首周りに沿って巻き付くように立っていたり、折り返されたりしている襟のこと。
ロールカラーの襟ぐりを大きく取ることで、首筋や鎖骨を綺麗に見せます。
女性らしく、クラシカルな印象を与えます。
背中
ベアバック
背中を大きく露出したデザインのこと。
bare(=裸)back(=背中)の意味で「ヌードバック」や「ド・ニュ(フランス語)」とも呼びます。
背中を強調して「全面を開ける」「布を交差させる」など、様々なバリエーションがあります。
イブニングドレスに見られるデザインです。
ベアバックのウエディングドレスを着る場合は、ベアバックに対応した「バックレスタイプのブライダルインナー」が必要不可欠です。
スリーブ(袖・袖部分の形)
- フレンチスリーブ
- ロングスリーブ
- アメリカンスリーブ
- ノースリーブ
- パフスリーブ
- タイトスリーブ
- パゴタ
- マンダリンスリーブ、ベルスリーブ
フレンチスリーブ
袖付けの切り替えが無い、ごく短い袖のこと。
※袖付けに切り替えがあっても「肩が隠れる程度の短い袖」であれば、フレンチスリーブと言う場合もあります。
着物の袖に似ていることから「キモノスリーブ」と呼ばれることも。
ノースリーブと半袖の中間くらいの長さで、なで肩や腕の細い人におすすめの清楚なタイプです。
ロングスリーブ
二の腕の太さが気になる人には、ロングスリーブがおすすめ。
レースなど透け感のある素材にすれば、長袖でも軽やかな印象になります。
アメリカンスリーブ
首の付け根近くから、袖下まで大きく斜めにカットしたデザインです。
アメリカ的な開放的な印象を与えることから「アメリカンスリーブ」と呼ばれます。
ノースリーブで、肩と腕のラインが強調されて、スタイリッシュで健康的なイメージを与えます。
ホルターネックとも似ていますが、背中は開かず、前も後ろも同じデザインになっています。
どんなスカートのシルエットも相性が良く、「いかり肩」や「首が長い」人の方が似合います。
ノースリーブ
女性らしさが強調されるデザイン。
肌の露出に厳しい教会式では、ロンググローブが必要になります。
パフスリーブ
袖部分がふわっと広がったデザイン。
可憐でキュートな雰囲気で「二の腕を出すのが嫌」、「ビスチェには抵抗がある」という人にもおすすめ。
元々、パフスリーブは「半袖」を指し、長袖のパフスリーブは「ビショップスリーブ」や「メロンスリーブ」と言います。
一般的には半袖・長袖問わず「パフスリーブ」と総称する場合が多いです。他にも「提灯袖(ちょうちんそで)」や「バルーンスリーブ」と呼ばれることも。
タイトスリーブ
腕にフィットした細身の袖のこと。
「フィティッド・スリーブ」とも言います。
パゴタ
袖の上部が細く、ヒジから袖口にかけてラッパのように広がった優美なデザインです。
パコダとは「東洋の仏塔」を意味します。
仏塔と同じく、3段や5段など、段を重ねたパコダスリーブもあります。袖の長さは様々。
袖口と対比して二の腕を細く見せる効果があり、腕の動きを優雅に見せます。
また二の腕を隠して袖口に向かってボリュームが出るので「腕が細すぎる」ことをお悩みの人にも向いています。
マンダリンスリーブ、ベルスリーブ
肩からヒジまでは体にフィットして、ヒジから袖口にかけて、ゆるく広がるデザインのこと。
マンダリン (Mandarin)は「官吏」の意味で、中国の清朝時代の官服に由来します。「ベルスリーブ」とも呼ばれます。
軽くて透ける生地(オーガンジーやシフォンなど)や、レース生地を使用して、マンダリンスリーブを作ります。
大人っぽく優雅な印象を与えます。パコダスリーブと比較して、広がりは抑えめ。
上着
ボレロ
短い丈の上着。襟が無いものが多く、袖付きと袖無しがあります。
ドレスの上に羽織ることで、2Wayドレスとして着たり、夜の肌寒い時の防寒用に役立ったりします。
戒律の厳しいキリスト教式では、肌の過剰な露出を禁じている場合が多いので、肌の露出を減らすために着る場合もあります。
スカートのデザイン
- トレーン
- ドレープ
- オーバースカート
- タッキングスカート
- ティアード
- チュチュ
- バッスルライン
- バルーンスカート
- フルレングス
- ミディレングス
- ミニ
トレーン
ドレスの後ろで長く引きずるスカートの裾部分のこと。「引き裾(ひきすそ)」とも呼びます。
長めは「エレガント」、短めは「キュートでカジュアル」な印象になります。
長いヴァージンロードや階段、厳かなでは長いトレーンが映えますが、狭い会場や動き回りたい時は短めが良いです。
トレーンを外せる2Way・3Wayタイプのドレスを選んだり、後ろ腰の部分にバッスル(腰当てのこと)を入れてスカートを膨らませたりすれば、長さを調整することもできます。
ドレープ
布を垂らした時に自然にできる「ひだ」「たるみ」のこと。
ウェディングドレスでは、スカートだけではなく、ネックラインやウエスト部分にもドレープを用いることで、美しく優雅な印象を与えます。
ドレスのデザインや生地の張り・重さによって、ドレープの出方(垂れ下がり具合、しなやかさ)も異なります。
オーバースカート
ドレスやスカートの上に、重ねて着るスカートのこと。
「二重に作られたスカートの外側」の部分で、スカートにボリュームを出したい時やシルエットを変えたい時に使います。
例えば下のドレスをシンプルめ、上のオーバースカートを豪華にすれば、2Wayドレスとしても使えます。
お色直しの時間を大幅に短縮できるので、かなり便利です。
タッキングスカート
タック※を寄せたスカートのこと。
※一定間隔で布を寄せて縫った「ひだ」。
シンプルなウェディングドレス(Aラインなど)のスカートにタックを寄せることで、自然なふくらみを作り、ボリューム感を出して華やかな印象になります。
布に陰影を付けて立体的なフォルムを作ったり、透け感がある布(オーガンジー、チュール、タフタなど)をオーバースカートにしてタックを付けることで、華麗さが増します。
ティアード
フリルや帯状の布を段々に重ねたり、丈の異なるスカートを重ねたりして、裾にかけて広がる形にボリュームを出したスカートのこと。
切替部分にギャザーやタック、フレア、フランスを付けることで、ドレープを出します。
段数やフリルの量、生地によって雰囲気がかなり変わります。
シフォンやオーガンジーなど軽くて透ける生地は、ふんわりと可愛らしいイメージ。サテンなどしっかりした生地は、ボリュームとフェミニンさを演出できます。
チュチュ
オーガンジーやチュールなどを何重にも重ねて、ギャザーを寄せたスカートのこと。
バレリーナをモチーフにしたドレスを「チュチュドレス」と言い、ふわふわっとしたスカートで、かなりキュートなイメージになります。
バッスルライン
腰の後ろにバッスル※を入れて、ヒップラインを大きく美しくふくらませたシルエットが特徴です。
※スカートの後ろ部分を膨らませる為に用いる腰当てや枠のこと。
19世紀半~20世紀初めに流行した形で、日本だと「鹿鳴館スタイル」と言えば分かりやすいでしょうか。
現在はスカートの後ろ部分を束ねて膨らませたり、布を背中部分でギャザーを寄せてリボンなどの形にまとめてウェストに付けるスタイルも「バッスルライン」と呼ばれます。
ヒップを大きく膨らませることでウェストを細く見せて、女性らしいエレガントな雰囲気を演出できます。
バルーンスカート
風船(バルーン)のように、丸くふくらんだシルエットのスカートのこと。
バルーンスカートの作り方としては
1.ウエストと裾にギャザーやプリーツ、シャーリングを施して、上下を絞り、真ん中部分を膨らませる。
2.柔らかい生地を使って、折り目を付けず、無造作に折り返すことで、スカートをふわっとさせる。
という2種類の方法があります。
フルレングス
「フル(=充分な)、レングス(=丈)」で、ウエディングドレスでは足全体を隠して、床に届くほどの長さのあるスカート丈のこと。
「等身大」「実物大」という意味もあります。
ミディレングス
ふくらはぎの中央くらいの長さのスカート丈のこと。ひざが隠れる程度の丈です。
「ミモレレングス」「ミッドカーフレングス」とも言います。
ミディはフランス語で「中間の」を意味します。英語の「ミドル」と同じです。
アフタヌーンドレスのスカート丈は、ノーマル(膝下)またはミディが基本になります。
ミニ
膝よりも短いスカート丈のこと。
スカートの丈が短いデザインは、キュートでカジュアルなイメージで、動きやすいので、ガーデンやレストランでのパーティーに向きます。